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あのとき④

  • 2012/03/30 12:40
  • Category: 物語
 「美味しいモノが食べたい」というピースとウォーにそりゃ不味いものよりかは断然いいだろうと思いつつも、この二人は生まれてきたばかりの赤ん坊と変わらないのだとも分かっている。得体の知れない風貌だが、彼らに対してリアルは幾分か優しくなった。
 「美味しいモノって何だ?」
 と、唐突に難しい質問をしてきたのはサダメだ。
 カレーだって嫌いな人がいるんだ。美味しいっていう定義は人それぞれだろう。
 リアルが黙っていると、サダメは「ちゃんこか?」と言った。その答えは予期できなかった。
 「ちゃんこを超えるモノはいっぱいありますよ」その後に何か気の利いた例を出そうとしたが、出ない。ああ、もう。しょうもないことを言ってしまいそうだ。ああ、「カレーとか」。焦ると普通のことを言ってしまう。
 「でも、鍋っていうのはいいもんだろう」
 なるほど鍋か。確かに、平和と戦争に美味しいモノと言って食べさせるにはいいかもしれない。皆で鍋を囲む姿はまさに平和を象徴しているし、戦争反対を体現しているようでもある。
 話を円滑に進めるサダメ。これも運命か。
 「いいですね、鍋。じゃあ、鍋にしましょうか」
 「そうしましょう。買い出しからついていきますよ」
 ん?今喋ったのは恐竜だよな。「買い出し」なんて言葉知っているのか。リアルは若干の違和感を覚えつつ、話を進めることに徹する。
 「いや、いいですよ。いい飯屋があるんですよ」
 「いやいや、買い出ししましょう。デパ地下で」
 何だこの食いつきようは。デパ地下縛り。場所まで指定するなんてあからさまにおかしい。デパ地下の品ぞろえ知っているのか。
 「サダメさん、何かありますよねこの仕事」
 「何もなければ、オレは介在しない」
 確かに。サダメを経由してリアルにコンタクトをとる必要なんてなかったはず。
 「大丈夫だ。普通に買い出しに行って、このメモ通りの順番に買い物を済ませればいいんだ。そうすればピースとウォーの用事が済み、こっちの用事も済む。一石二鳥、やったね」
 恐ろしいな、運命は何でも知っている。その上で周りを巻き込み、自分の仕事を終わらせてしまう。
 リアルはサダメからメモを受け取り、正式にこの仕事を引き受けることにした。
 帰る際にピースとウォーにきつく釘をさしておいた。
 「その恰好で現実に来てはダメですからね。どうか普通の人間の恰好を研究してから来てください」
 みたいなことを、言葉を変えてしっかりと言った。三回ではきかないとみて四回言った。

 急いで帰ったつもりが、小島くんはもういなかった。
 あっちの世界の時間の感覚は現実とは違う。
 それにしても飯を食べていなかったので、B定食を頼んで待った。外はいつの間にか夜になっていて、出された飲み物もお茶になっていた。昼との違いは、客のお金の使い方だろうか。その分もてなし方もグレードアップするのか。
 「おまちどおさま」と言われ、運ばれてきたのは大きなキャベツの山と中くらいなコロッケ二つと小さなトマト。それにご飯とみそ汁をつけて900円。昼よりも270円も高い。
 デカ盛りと評判であったが、そんなでもないのに安心した。小島くんを残したことがきがかりであった。
 箸でコロッケを口に運ぶ。予想外の熱さに驚き、咀嚼をする前に皿に戻した。
 失礼かと思い、店員を盗み見る。こっちを見ずに呆けていた。この店内の客の状況と同様、それはそれで心配になった。
 冷める間にメモに目を通すことにした。
 『デパ地下にて。蟹→白菜→土鍋→鮭』
 蟹の近くに鮭も売ってるのではないだろうか。順番がどうも腑に落ちないが、サダメのことなので何かあるのだろうと納得する。
 お茶から湯気が出なくなったころ、コロッケを口に放り込んだ。
 ポテトでなくカニクリームコロッケであった。なんだか得をした気分になる。今なら美味しいモノをカニクリームコロッケと言うだろう。さも当然、それが自然の摂理だとでもいうように。
 コロッケ同様ホクホクとした表情でみそ汁をすすっていると、頭上から「おまちどおさま」という声が聞こえた。このテーブルの皿じゃないと思い、注意を試みたが、この店の状況が頭をかすめる。リアル以外に客はいない。
 「もう頼んでいませんよ」というリアルの空余裕を打ち消すかのように、大きなキャベツの山と中くらいのハンバーグと小さなトマトの皿は置かれた。
 「え?」「B定食の二皿目です。最後の一皿ももう少しでお持ちしますので、お待ちください」「え?」
 見たことのある皿。
 少ししたらもう一枚見たことのある皿。センターがカツに変わっただけ。
 一日分の食物繊維を補給しつつ、リアルは心の中で小島くんに謝った。
 計六皿は理不尽だ。
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あのとき③

  • 2012/03/29 21:18
  • Category: 物語
 「いいですか?」
 そう前置きをいれて、リアルは矢継ぎ早に口にする。
 「色々言いたいことがありますが、この二人。二人?というよりも、というよりも」
 白骨化した恐竜とシャチホコはどう数えればいいんだ。分からない。ただ分かるのは、一人二人とは決して数えないということだけ。
 「というより?」
 「ええい、そこはもういいです。本当に平和と戦争なんですか?」
 「本当だよ」
 ピースと思しきモノが喋る。スカスカな身体のどこから発声しているのか。分からない。ただ分かるのは、恐竜に似つかわしくないポップな言い方には決して突っ込んではいけないんだろうということだけ。
 「さっきも言っただろう」サダメは言う。足を組み換え、こんもりを強調するかのように。
 しかしもうリアルの視線は固定された。まばゆい光を放つシャチホコ。
 「平和は地下にいるんだ」
 もうシャチホコしか見れない。喋っている人の目を見るのが礼儀でも、シャチホコがいればそっちに目がいくだろう。それこそ道理だ。
 「だから恐竜の骨、ですか」
 「そうだ。誰かが掘り起こして平和を得たんだ」
 「ということは」まさか。まさかシャチホコは空を飛ぶ戦争なのか。「おかしいでしょう。地下に眠る平和が恐竜なのはいいとして、いやまあかなりの無茶の上で成り立っている納得ですよ。それにしても空を飛ぶ戦争がシャチホコって!全然空じゃない上に、ちょっと手をのばせば届いちゃうでしょう」
 「現実ってそんなもの」
 「それを言うのはオレの仕事だ」
 気づけば、自分の体の幾倍かも分からない恐竜に怒鳴っていた。食われても消化されないだろうと、即座に自分を宥めてみた。
 「この姿は洒落だよ」
 帰ってきた言葉が思った以上に柔らかで、リアルは拍子抜けしたと同時に、本当に安心した。
 「いつもは形がないんだ、僕らは。リアルやサダメのようにいつも形になっているわけではない。まあ、思えばいつだって、何にだってなれるんだけど」
 そう。僕たちは生物ではない、誰かの意識に介在する無実体。
 その中でも平和と戦争は現実に出ることがあまり許されていない。現にリアルが彼らにあったのは初めてであった。
 「形作るのは久しぶりなんだ。何になればいいかわからなくてね。僕らが出る前フリでサダメが何か言うってなったから、せっかくだしそれに合わせた格好をしようと思ってね」
 今度は口の動かないシャチホコが声を出す。
 「僕らは特別な時にしか現れない」
 「え?」じゃあ、何か特別なことが起こっているのか。平和と戦争が現れるような事態が。
 そんな不安はあれど、視界の隅に見えるサダメの寝顔が非常に腹立つ。
 シャチホコの話を恐竜が継ぐ。
 「僕らは人間、生物の感覚を知っていなければならない。でなきゃ、平和を与えることも、戦争を与えることも不公平になりかねない。だから僕達は時々、形になって学ぶんだ。もちろん、内緒でね」
 「そうですか」
 「どうだ、現実に降り立って人間と自由に話し、ギャンブルばかりの自分が幸せだって気づいたか」
 さっきまでの寝顔はなかったかのように、真面目な表情を作ってサダメは言う。しかし、リアルは全てを見ていた。シャチホコと恐竜に目を奪われつつもしっかりと見ていた。運命は適当だ。
 それでも、リアルは意外と真面目な話だな、と自分の土俵から外れていくことを感じる。もちろんサダメを除き。
 「昔経験したんだけど、長い月日で忘れてしまって。今回はあることを思い出すために形になったんだけど」
 「どうしても現実に行かなくてはいけなくて。現実慣れしていないから、その引率をリアルに頼みたいのだ」とシャチホコが動かぬ口をはさむ。尊厳な口調でも、その重要さは伝わりにくい。
 「そうですか。まあ、それくらいいいですけどね。そして何をするんですか」
 「味覚だ」
 リアルは自分の土俵に帰ってきたことを感じた。
 骨のくせに味覚。口動かないくせに味覚。
 面白いネタができそうだ。
 まあ、その姿で現実に来たら激しく無視するけど。

あのとき②

  • 2012/03/29 18:52
  • Category: 物語
 トイレから飛んだ先は、便器に負けないくらい真っ白な世界に包まれていた。現実ではないどこかだと思ってくれればいい。
 玉座にはベースボーラ―ご用達、アンダーアーマーのみを身にまとったサダメがどっかりと背を預けている。運命はピッチピチの服しか着ない。というより、少しでもヒラヒラしている服は着ても破ってしまうため、いつしか下の者がスピードレーサーかスパッツかアンダーアーマーから選んで渡すことになったらしい。スピードレーサーは着るのに時間がかかるといって、最近はもっぱらスパッツかアンダーアーマーだそうだ。
 「ようこそ、現実」
 運命には逆らえない。リアルは強制的に呼ばれた。「半」はつかない。
 「何の用でしょうか」
 「なんだよ、つれないなあ」
 サダメはそう言って座りなおした。どうも腰の位置が悪かったらしいのだが、アンダーアーマーの弊害、股のこんもりが垣間見えた。リアルの気分もそうとうに悪くなったが、何もしなかった。
 「こんな話を聞いたことないか?」
 どんな話だろう、素直にそう思えれば楽なのにね。意識はこんもりにあり、視線は空を切る。何も言えずに肩をすくめてみせると、サダメは満足げに話を続ける。
 「平和は地下に眠り、戦争は空を飛ぶ」
 「意味深な言葉ですね」
 シッ。
 サダメは人差し指でリアルをさしている。その指をゆっくりと口の前に移動させ、唇を突き出して見せる。
 そこでリアルは自分のしたことを理解する。
 サダメは自分の話を相槌で邪魔されるのを嫌う。相槌とは話を進めやすくするためなのに嫌うというのは、話を自分一人でまわしたいことがうかがえる。
 こんもりといい、その性格といい運命は身勝手だ。
 「誰かが掘り起こさなければ平和は現れない」
 「……」
 こうなればリアルは黙るほかない。上を向けばサダメの睨み顔。下を向けばサダメのこんもり。行き場のない視線は自身の足で落ち着いた。
 「戦争はできる限り人の手に触れないような、遠い空から見守る」
 「……」
 「悲しいかな、誰も近くにある平和に気づかず、遠い戦争に手をのばす」
 「……」
 「……なんか言えよ」
 「面倒くせえな、オイ!」というのは心の奥底にしまっておいて、リアルは「深いですね」と頭をかすめてもいないことを口にしていた。
 「誰の言葉ですか?」
 リアルはその答えを知っている。正直なところ聞きたくもない。
 フフン、と意気った笑いを見せてからサダメは言う。
 「オレだ」
 ほらね。
 「ということで、本日のゲストに登場していただきましょう。平和と戦争です、どうぞ!」
 まさか。
 現れた白骨恐竜と金のシャチホコが「ピースと呼んでください」「ウォーと呼んでください」と言うまで、リアルの口は「か」の形で固まっていたという。

番外編

 春の風物詩「桜」はこれからですが、春公演は終わりました。
 長い準備期間、12月から始めて3か月以上。
 とにかく長かった。
 千秋楽が終わり、バラシ、打ち上げに参加してもどうも終わった気がしなかった。
 「終わった時の感動は凄いぞ」と聞いていた分、皆がわざわざ書いてくれた色紙を渡されたときにウルッとこなかった自分に驚愕しました。
 こんなにも俺は感情の薄い人間だったのか、と。

 しかし、それは違うのですね。
 長かったからなんですよ。
 始まってから終わるまでが長かったからなんです。
 その日々一つ一つを思い起こすのにかなりの時間がかかった。丸一日かかってしまうほど。
 それほどまでに濃い日々でした。
 帰りの電車でやっとこさ終わったという達成感に包まれ、家に着くと感動がおしよせ、ようやくウルッときました。
 それでも泣かない。ここで泣いてはいけない。もっと大事な所があるはずだ。
 それからある文章を書くために、稽古の日々を何度も反芻しました。
 改めてよくこんな酔狂な企画についてきてくれたものだ、と思いました。
 アホくさくて、周りからは馬鹿にされるかもしれないような、そんなくだらない企画についてきてくれた。
 役者一人一人に大きな壁があり、最後はそれを壊してくれた。
 もう泣いていいだろう。ここが泣くところだろう。
 いつものようにふざけた文章を書こうと思っていたのに、結局うまくいきませんでした。

 喜劇なのに、最後は涙なんですね。
 それでもやはり喜劇。
 関わってくれたすべての人に感謝をして、涙ながらに笑いました。
 俺も感情的な人間なんだと証明された瞬間。
 今はもう色紙は見れない。笑えなくなりますよ。
 そうなると、終われないじゃないですか。

 感動の残っているうちにこんな真面目な文章を書いておきたかった。
 これからもやはりフザけていたい。
 ということで、阿呆でいさせてもらいます。
 これからもよろしくお願いします。

あのとき①

  • 2012/03/20 19:14
  • Category: 物語
 馬が走っているのを見て、左手に握りしめた映画の半券ほどの紙をクシャクシャにする。今までその紙をお金にかえたことはない。はした金であったし、元々ただの遊びなのだから大当たりがきても換金しない、と本当の気持ちとは真反対のことを思って自分を慰めてみた。現実ってそんなもの。
 他の者とは違い、よく人間の姿で現実に降り立つリアルは「現実を知るためだ」といって、ギャンブルに手を出す。費用は上が出してくれる、というより作ってくれる。
 「ダメですねぇ、申し訳ないです」
 ワーキャーうるさい競馬場で隣の小島くんは不釣り合いな小さな声を出す。聞こえたのが不思議なくらいだ。
 「もういい、出ようか」
 リアルはそう申し出て、すぐに出口に歩き始めた。
 小島くんは普通の人間。どちらかというと底辺よりの人間である。
 リアルは多くの人間と交流がある。しかし、姿がいつも違うので今の姿を見てリアルだと気づくかどうかは知らない。小島くんはいつも気づく。
 キャリアウーマン調で喫茶店にいたときも、「リアルさんでしょう。どうですか現実は」と聞いてきた。
 あまりにもリアルの正体がバレるので、もしや道行く人全員に聞いているんじゃないかと疑い、人気ロックバンドのボーカル調、誰でも知っているような恰好で小島くんを見張ってみた。
 すると小島くんは何の躊躇もなしにこちらに近づいてくる。
 「今日は晴れやかな天気ですけど、何か起きますか」
 ちょっと抵抗してみることにして「ROCK!」って言ってみても、小島くんは「岩、ですか。落石注意ですかね」と独り言気味に言葉にするだけ、目の前の男がリアルであることは信じきっている。
 それからリアルは小島くんを一目おいている。たとえ社会的に負けとされても、それを現実だと受け止めて生きている小島くんに拍手をしている。
 東側の出口から出て、駅前のややさびれた商店街のややさびれた洋食店に入った。飯を食っていなかった。
 後ろからついてきた小島くんは洋食店という響きに似合わない店内を見渡して、「ざるそばとかが似合いそうですよね、ここ」といった。「一度入ってみたかったんです」ともいった。
 おそらく夫婦できりもりしているのだろう、店員は五十代と思しき男女だけである。その女の方がコップいっぱいに水を注いでもってきた。
 小島くんはその水をもらったついでのように「おすすめは何でしょう?」と聞いた。
 「そうですね、お得なB定食なんかはやすい、うまい、はやいの三拍子ですけどね」
 どこかで聞いたことのあるキャッチコピーを聞き流し、二人ともそれにした。
 なんとも現実感のない会話。
 現実はもっと残酷で、醜いもの。
 小島くんに至っては自分のおかれた状況を知ったうえで笑っていられるとは、現実とかけ離れすぎている。そういったところも、ひかれたのかもしれない、とリアルは思った。
 プルルルルルル。
 まずいな、そう思いつつリアルは携帯電話を出した。
 着信は仕事の合図。
 そんなオーソドックスな着信音をわずらわしく思い、店員からは思われているだろう。
 そんなことを無視しつつ、テーブルの上にお金を出した。Bランチ二つ分1260円。
 小島くんは一文無し。リアルは今から強制的に仕事。
 「おれの分も食べてくれ、今から消えるから」
 「いいんですか?ありがとうございます」
 ワーイという小島くんの声を聞きながら、そういえばここはデカ盛りの店だったなあ、残したら怒られるんだよなあ、という重要なことをすべて忘れたフリをして、トイレに向かった。
 個室のあるトイレは人類で最大の発明だ。これでいつでもあっちにいける。
 和式のトイレに入って携帯のディスプレイを覗く。
 「運命より着信」
 残念、運命には逆らえない。

次にいつ更新されるかも分からないのに、次回予告なんてできるか。しかしまあ……

 飽きっぽい性格。
 面倒になると投げ出す体質。
 そんな本性をおさえるために始めた次回予告制度。
 目的通りの結果を得ているが、目的以上に苦しい現実。
 半分ふざけてビンの蓋を思いっきりしめたら開けられなくなって賞味期限を超えてしまった時の切なさみたいなのを想像してもらえば気持ちを分かり合えると思います。
 やるせないでしょう、やるせないんです。
 しかしまあ、何とかやっていきますよこのまま。
 この制度を逆手にとってね。

 そして、問題はまだある。
 この文章は劇団全体のためであるということ。
 つまりは、今まで全く関係のないことばかりすいません、ということ。
 更に言うと、一言ではすまないような深いメンバー紹介をやってもらおう、ということ。
 要約すれば、劇団員総出で文章を書く苦しみを味わおう、ということ。

 さあ、次回予告に名前の出た人は頑張りましょうね。


 次回「座長!田畑良守のコレでリョウマと読む」をよろしくおねがいします。

さわり

  • 2012/03/19 18:51
  • Category: 物語
 地下だというのに、こんなにも眩しいなんておかしい。
 いつもの環境との違いに戸惑いながら、ピースは思った。隣にいる伊達政宗はもっとおかしい、とも思った。
 「やっぱり、ウォーがむやみに注目を浴びているんだよ。仙台じゃないんだから」
 ピースは伊達政宗の恰好で当たり前のような顔をしているウォーに言ってやった。仙台をだしたのは知識をひけらかしたいがため、ただそれだけである。
 「おれだけじゃないよ、ピースだっておかしいだろう。まず顔を出せよ。それが一番失礼なんだぜ」
 ウォーも負けじと知識を出してくる。ただ残念なことに、ちょっと間違えているのが悲しい。
 本当にこの二人は平和と戦争なんだろうか。少し、いやかなり不安になってきた。まあでも分からない、始まったばっかりだと自分に言い聞かせつつ、リアルは「どっちもどっちなんです」と教え諭すように言葉を発した。
 「分からないな。資料によるとこの恰好で人間は楽しそうに踊るのだろう。間違っているのか?」
 「ああ、間違ってはいないんですよ。間違ってはいないんですけども、この場所にピエロはいないですよね。それはわかります?」
 そう、見渡す限りピエロも伊達政宗もいない。もちろん、仙台にもいないだろう。
 「なんだよ、みんなして同じような恰好をしなければいけないのか?」
 「つまらない世界だなここは」とウォーは声にだす。発声になれていないからか思った以上に大きな声になった。そのため、右斜め前にいるケーキ売りの女の子が目に見えてビクついた。
 ああ、平和も戦争もまるで現実感がない。
 「人間は異物を必要以上に恐れるんですよ。そしてあなた方はこれ以上ない具合に異物なんです」
 今こんな話をしている自分も十分に異物だと自覚しつつ、リアルは続ける。ケーキ売りの女の子の視線が気になる。
 「人を怖がらせる必要がありますか?」一応答えさせる間をおいてから続ける。「必要ないんです。目的を忘れないでくださいよ、おねがいですから」
 「じゃあ、あんな風にスーツを着ればいいのか?」
 なんとも不満げにウォーは訊ねる。
 「もういいです。これ以上騒ぎを大きくしなければいいですから。このままの恰好でいきましょう」
 「どこに?」
 「どこにってねぇ」あんたらがわがまま言うからつれてきたんでしょうが、というのは飲み込んだ。
 「……」
 「どこに?」
 今度はピースが口をはさむ。
 「……どこでしょう?」
 目的のものはどこにあるんだろうか。
 リアルは迷った。その意味はリアル、ピース、ウォーの三人が迷子になったということと直結している。
 デパ地下で迷子のピエロと伊達政宗とその付き人。
 ケーキ売りの娘は、ホッとしたような顔で奥に引っ込んでいった。
 それでもまだまだ視線はある。ほぼ三人にくぎ付け。
 リアルは現実を守るために、極力平穏に蟹を探し出さなければならない。
 売り子が引いているのにも気づかずに試食コーナーを荒らし始めたピエロと伊達を連れて。
 あの時を思い出す。
 こんなことになってしまったあの時を思い出す。
 

何か企画をしたい。このままじゃあ枯渇します。だからその主旨説明をしたい。

 枯渇している。
 アイデアというか、ネタというか。
 感想をくれ。
 突き詰めていうなれば、書く意味をくれ。
 枯渇し切っている。
 水(アイデアとか)もなくて生きられるか。
 サボテンじゃないんだから…。

 ということで、何か企画があれば稼げると思いつきました。
 そうだ、物語を書こう、と。
 構想も未来も考えずにいきあたりばったりの文章を書こう、と。
 ベクトルが違うんじゃない?って誰かが言うまで適当しますよ。それが楽なもんだから。
 とりあえず念頭においてほしいことがあります。
 「上手い」と思えるようなものではなく、逆に矛盾や無茶を見て楽しむものであるということです。書いてる人追い込まれてるなぁ、と笑うのが主旨であります。
 どんなことになっても完結させる気ではありますが、たまには消化不良もいいものだ、と無理やりにでも思ってほしい。

 次回「次にいつ更新されるかも分からないのに、次回予告なんてできるか。しかしまあ……」をよろしくおねがいします。

サイモン&ガーファンクル サウンドオブサイレンス

 サウンドオブサイレンス。
 直訳すると「沈黙の音」。
 何かすごい。抜け目がないというか、完璧だ。
 僕もこんな言葉を考えてみたい。
 まず、沈黙と音が相反する言葉であるから、いいのかもしれない。
 「草食のトラ」
 違う。かっこ悪すぎる。そりゃあ兎と一緒に草食っていたら多少の愛着もわくだろうけど、違う。
 なので、相反しているけどもそれでいて調和しているような絶妙な雰囲気を出せばいいと考える。
 「川端康成の蟹工船」
 調和してるっぽいけども…。ただの馬鹿発言だし、相反してないし。
 じゃあもう、思いのままに「の」で2つの言葉をつなげればいいのではないか。
 「木下の脇の下」
 作詞ってすごいな。
 絶対に真似できないな。
 沈黙の音だけでなく「ネオンの神」とかもある。風刺や皮肉も効いていて凄いですよね。


 このタイトルを見たときにサウンドオブサイレンスの思い出話でもするのかなって思った人もいるんじゃないですか?真面目に評価をするんじゃないか、とか。
 そんな期待を裏切りたかった。
 最後までふざけたかった。
 裏切られた人が何人いるだろう。
 というより、見ている人が何人いるだろう。
 ああ、無常。なぜこんなにしんみりとするのか。
 最後までふざけていたかった。

 次回「何か企画をしたい。このままじゃあ枯渇します。だからその主旨説明をしたい」をよろしくおねがいします。

憎悪も忘れる魔法の鏡

 グリム童話の一、『白雪姫』に登場する魔法の鏡。
 その鏡に白雪姫の継母は「世界で一番美しいのは誰?」と訊く。自身に都合のよい答えを予期して、したり顔で鏡の言葉を待つ。
 それに反して鏡は「白雪姫です」と答えてしまう。読者からすれば気持ちのいい展開だが継母からしたらそうはいかない。みるみる憎悪にまみれる継母の表情は滑稽にさえ思えるが、その感情の激しさゆえに白雪姫殺害計画なるものを企てる。
 あんなに面白い鏡を前にして恨むというマイナスの感情をあらわにするなんて…。ナンセンス。
 だって、世界で一番美しいかどうかはいわば考える人の好みによって左右されるのであって一定ではない質問である。しかし魔法の鏡であるから、そんな主観をも超越した「自然の摂理」ともいうべき真の答えが得られるかもしれない。面白いでしょう。


 鏡よ、じゃあ世界で一番うまい調味料ってなんだろう。
 「えーと、チャツネ」
 …まさかだよ。てっきり塩とか有名なヤツかと思っていた。汎用性まるでないでしょう、チャツネって。インド系なのかな。
 じゃあ、料理で最高なのは?
 「鱒寿司」
 ああ、そう。カレーじゃないのね。別にインドがどうとか、そういう話ではない、と。富山県の郷土料理がベストってのは日本人としてすごい光栄ですけど、世界的に見たら鱒寿司ってマイナーもいいところでしょう。チャツネの方がまだ有名なんじゃないかな、知らないけど。
 じゃあ―――。
 「もう勘弁してくださいよ。自分偏食なんですよぉ」

 
 ああ、面白い。バリバリ主観じゃないですか。
 まあ、これはただの魔法の鏡の遊び方の一例にすぎないのですが、継母もこんな風に遊べればよかったのに。センスのない使い方をしたものだ。
 大喜劇になれるところで、殺害計画なんていう悲劇的要素を持ち出すなんて。
 もったいない。
 こんな馬鹿話でしたが、ぼくらの生きる現代においても全く関係ないということはない気もします。
 何はともあれ、そんな継母を「ハンッ」って笑ってやりますよ、僕は。
 せいいっぱい皮肉を込めて、笑ってやりますよ。

 次回「サイモン&ガーファンクル サウンドオブサイレンス」をよろしくおねがいします。 

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