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獅子の故郷⑤

  • 2013/07/25 09:50
  • Category: 物語
そう言えばこんな感じだったなあ。思い出してみれば物語の冒頭は簡単なもので、それでいてその容易さが悲しくもある。
あの日々が脳の中で整理され、今や小学生なのかさえ定かではない具合だ。
「遅いな」
何度も腕時計を確認するが、何一つ現れやしない。風がボーっと吹き抜けて、地下から地上を臨んでいる。それ以外に物は動かない。
そうか、あの頃の駅との違いがあった、などと納得する。
「虫も鼠もいないんだな」
だから寂しいのか、と続けるはずが、それこそ寂しいので止しておいた。
ボー。
もう来ないのだろう。勝手にそう結論づけて、トイレに行く。
したくもないのに、便器に腰掛けたのはいつも列をなしているからなのか。今日はドアが開け放たれている。その稀少感が勝のズボンを脱がせたのだ。
といっても出ない。出ない物は出ない。
シャーっと水だけが音を成す。
拭く必要もないか、とそのままズボンをはこうとして勝は動きを止めた。
「そう言えば」
目の前の落書き。
視線の先にはトイレによくある落書きがしてあった。
またもや勝の記憶は蘇る。
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人の心を、悲しみを感じる心を持つ者なら・・・勝よ、素直になれっ!
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  • 2013/07/26 00:15

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